NrCAMの化学的阻害剤は、NrCAMが関与する様々なシグナル伝達経路や細胞プロセスに影響を与えながら、様々なメカニズムで阻害効果を発揮する。例えば、L-NAMEは一酸化窒素合成酵素を阻害するが、この酵素は軸索の成長とガイダンスに調節的役割を果たす。一酸化窒素の産生を阻害することにより、L-NAMEはNrCAMの一部である細胞骨格の動態を変化させ、神経突起の伸長におけるNrCAMの機能的役割を阻害する。同様に、Srcファミリーキナーゼ阻害剤であるPP2は、神経細胞の成長錐体ガイダンスにおけるNrCAMの機能に不可欠な、NrCAMのリン酸化を阻害する。したがって、PP2によるSrcキナーゼの阻害は、神経細胞の発達に不可欠なシグナル伝達カスケードへのNrCAMの参加を阻害する。
LY294002とU0126は、それぞれPI3KとMEK/ERK経路を標的とする。PI3K阻害剤であるLY294002は、神経細胞膜におけるNrCAMの安定化と細胞骨格との相互作用を阻害し、神経細胞シグナル伝達におけるNrCAMの役割を低下させる。U0126は、MEKを阻害することにより、下流のERK経路を障害し、NrCAMのような細胞接着分子の機能に影響を与える。SB203580、SP600125、NSC23766は、NrCAMの機能経路に関与する他のキナーゼやGTPaseを阻害する。SB203580はp38 MAPキナーゼ阻害剤として、SP600125はJNK阻害剤として、NrCAMが関与する細胞骨格ダイナミクスと細胞接着プロセスを阻害する。NSC23766は、Rac1を阻害することにより、Rac1依存性の細胞骨格再編成におけるNrCAMの役割を阻害する。BAPTA-AM、Go6983およびW7塩酸塩は、それぞれカルシウムシグナルおよびカルモジュリンを阻害する。BAPTA-AMはシナプス形成におけるNrCAMの役割に重要な細胞内カルシウムをキレートし、Go6983はNrCAMを制御するPKCを阻害する。W7塩酸塩は、カルモジュリンと拮抗することにより、NrCAMとの相互作用を阻害し、カルシウム依存性のシグナル伝達過程に影響を与える。最後に、ROCK阻害剤であるY-27632は、ROCK依存性シグナル伝達を阻害することにより、神経突起伸長と神経細胞移動におけるNrCAMの役割を阻害する。
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