SREゲルシフトオリゴヌクレオチドは、タンパク質-DNA相互作用の研究に用いられる分子生物学の基礎技術であるゲルシフトアッセイ用に特別に設計された短いDNA配列である。これらのオリゴヌクレオチドは、成長因子、サイトカイン、ストレス刺激などの細胞外シグナルに応答する遺伝子のプロモーターに見られる制御DNAモチーフである血清応答エレメント(SRE)のコンセンサス結合配列に由来する。SREモチーフは、血清応答因子(SRF)や三元複合因子(TCF)などの転写因子によって認識・結合され、環境からのシグナルに対する細胞応答を媒介し、遺伝子発現を制御する上で重要な役割を果たしている。SREゲルシフトオリゴヌクレオチドをゲルシフトアッセイに利用することで、研究者は様々な実験条件下でSRFやTCFとSREモチーフとの結合速度、特異性、親和性を調べることができる。この手法により、SRFやTCFを介した遺伝子制御の根底にある分子メカニズムの解明が可能になり、細胞の増殖、分化、アポトーシスなどの細胞プロセスを支配する複雑なシグナル伝達ネットワークに関する知見が得られる。
参考文献:
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