Oct-1 ゲルシフトオリゴヌクレオチドは、タンパク質-DNA相互作用の研究に用いられる分子生物学の基本技術であるゲルシフトアッセイ用にデザインされた短いDNA配列である。これらのオリゴヌクレオチドは、転写因子のPOU(Pit-Oct-Unc)ドメインファミリーに属するOct-1転写因子のコンセンサス結合配列に由来する。Oct-1は、標的遺伝子のプロモーター内にあるオクタマー・モチーフとして知られる特定のDNA配列に結合することにより、遺伝子発現の制御において重要な役割を果たしている。標的部位に結合すると、Oct-1は、その状況や他の制御タンパク質との相互作用に応じて、遺伝子の転写を活性化したり抑制したりする。ゲルシフトアッセイでOct-1ゲルシフトオリゴヌクレオチドを利用することにより、研究者は様々な実験条件下で、Oct-1の8量体モチーフへの結合速度、特異性、親和性を調べることができる。この技術により、Oct-1が介在する遺伝子制御の根底にある分子メカニズムが解明され、発生、分化、増殖などの細胞プロセスを支配する複雑なシグナル伝達ネットワークについての洞察が得られる。
参考文献:
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