Pol I阻害剤は、真核細胞においてリボソームRNA(rRNA)の転写に関与する必須酵素であるRNAポリメラーゼI(Pol I)を特異的に標的とし、その活性を阻害する一群の化合物である。Pol Iは、プレRNAとして知られる大きな前駆体RNA分子の転写を担当し、その後、タンパク質合成を担う細胞機構であるリボソームの重要な構成要素である成熟型rRNAへと加工される。Pol Iの活性が阻害されると、リボソームの生合成が阻害され、機能的なリボソームの産生が減少し、その結果、細胞内でのタンパク質合成が阻害される。
これらの阻害剤は通常、Pol Iの特定の領域に結合するか、rRNAの転写に必要な酵素活性を阻害することによって機能する。このプロセスを阻害することにより、Pol I阻害剤は細胞の成長と増殖に大きな影響を及ぼす。このクラスの化合物は、リボソーム生合成阻害の結果と細胞機能への影響を調べる手段を提供するため、細胞生物学の基本的プロセスの理解に関連する研究において大きな関心を集めてきた。さらに、Pol I阻害剤は、抗がん剤開発における可能性が検討されてきた。というのも、リボソーム生合成が抑制されないことは多くのがん細胞の特徴であり、Pol Iを阻害することで、急速に分裂するがん細胞を選択的に標的にできる可能性があるからである。しかし、ここでの焦点は化学クラスとその作用機序であることに注意することが重要である。